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OffTime9月号 ジャズピアニスト内田浩誠

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日常と非日常の「間-あわい-」に遊ぶジャズピアニスト

 小中学校時代、音楽の通信簿は「2」でしたよと楽しげに語るジャズピアニストの内田浩誠さん。中学、高校時代までは体育会系、大学からピアノを弾き始め、将来はジャズピアニストになると信じて疑わなかったというから、宿命だったのかもしれない。そんな内田さんは、2011年に生死の縁をさまよう病を患ったが、奇跡的な復活を遂げ、今も変わらぬ音色をファンのもとに届けている。「今、ピアノが弾けることが幸せだし、僕自身が何より楽しんでいますね」と微笑む横顔に迫った。

ジャズとの出会い、渡米、帰国。

 ジャズにはじめて触れたのは、中学生の頃、AMラジオの米軍向けラジオ局「AFN」を聴きながら勉強していた、その頃だったと思います。大学生の頃、母親に「ピアノを買って」と頼んだら、「ピアノって、あんた何するの?」って母親が。傑作でしょ。弾くに決まってるじゃないですか(笑)。

 それで福岡の大学に通うかたわら、猛練習しながら、アメリカの音楽学校にコンタクトをとりまくったんです。縁もゆかりもないアメリカでは、学校でジャズを学びながら、ライブハウスで演奏させてもらっていました。帰国後、「You’d BeSo Nice To Come Home To」(1960年)の世界的大ヒットによって
“ニューヨークのため息”と称されたジャズシンガーの大御所、Helen Merrill(ヘレンメリル)のジャパンツアーのピアノ伴奏者に指名されたんです。当時、日本中どこへ行ってもお客様でいっぱいになっていました。日本人もよく知っていたので大きな街から小さな街までずっと廻ってね。4ヶ月かけて100ヶ所近くの会場で演奏した。その当時から、東京の業界誌にとりあげられるようになったんです。世の中って面白いですね。そういう人材がいると知られると、向こうから話がくるんです。ヘレンメリルのアルバムだとかレコーディングしたりして、2〜3年の間に立て続けにアルバムを出した。27歳くらいだったかな。普通なら東京で下積み生活をしなければいけないところだけど、僕の場合はそれがなくて、「みんながあの人誰?急にやたら名前を見るよね、アメリカ帰りで良いらしいよ」というので話題になったんです。だから、どこでもすんなり仕事ができたというかね。

 アメリカ時代は、基本的に学生。クラシックの世界と違って、ポップス、ジャズの分野で作曲編曲をやるわけですから、実力だけがものをいう世界でした。学位をとったから就職できるというような世界ではなかったですし、先生たちもミュージシャンで、一歩間違えれば食うや食わずという貧乏しながら好きなことをやっているところがあったので、皆同じような環境でワイワイやっていました。アルバイトでピアノを弾くと、また別の人が声をかけてくれるという感じ。それで飯を食えるわけでもなかったですが。それよりもアメリカのジャズや音楽に限らず、そこにいる人達の暮らしぶりや文化というようなものに大きな刺激を受けました。生まれて初めて外国に住んで、日本とは随分と違うものだなあと。そういう意味でいろんなことを感じながら勉強させてもらいました。v

病の宣告は、晴天の霹靂だった

43歳で福岡に戻ってきたので、10数年は東京で暮らしていました。ちょうどふたり目の子供が生まれて、毎日、忙しく仕事をしていたんですけど、同じことの繰り返しのなかで、壁にぶつかっていたんですね。当時はピアノを弾いていてもあまり愉しくなかった。東京にいるのも面白くないなあと思うようになってきたし、もともと地元の福岡がいいところだというのは知っていたので、人生の転機として戻ることにしました。
 生活を変えて仕切りなおしをして、福岡を拠点にこれまで通り、音楽をやりました。結局、福岡だろうと東京だろうと、場所は関係なかった。今、40代から数えると20年くらい経ちましたけど、これまでいろんな仕事でいろんな人と関わらせていただきました。歳をとるにつれ、先が長くないなと考えるようになったり、病気になったり。若い頃は、全然考えませんでしたけど。
 肝臓の末期癌を宣告されたのは、2011年12月。ちょうど58歳の誕生日を迎える直前のことでした。あれから3年半が経ちましたけど、こうして以前と変わらない演奏活動ができるのは、本当にありがたいですね。

 たまたま福岡市がやっている500円の「よかどっく」を受診したんです。天神に自分の音楽教室があったものだから、すぐ近くのH内科に行ったら先生が見つけてくださった。エコーでね。血液は何ら異常を示すものはなかったんですけど、念のためにエコーをしましょうというので取ったら、肝臓に異常が見られるというのですぐに紹介状を書いてもらい、CTを撮りに行きました。それで九州医療センターへ行ったのが年末。そこから始まりました。
癌と聞いた時ですか。えっ!まさか、自分がそんな病気になるなんて全然思いもしませんでしたし、晴天の霹靂でした。自覚症状もあまりなかったので。ただ血液検査した時は全然何ともなかったのに、CTの検査結果を待っている一週間の間に、本当に何か体に痛みが出てきてね。肝臓が変な感じなんですよ。病院に行っておかしいと言われたら、急に体の方からもサインが出てきたみたいな。言ってみれば、その時点でもうすでにかなり進行していて、目にも黄疸が出かかっていたんです。肝内胆管癌と宣告されました。

 翌年1月、詳しい検査をしたところ、「あなたの場合は転移しているから、肝臓を切っても意味がないし、手術もできない。だからすぐに入院して抗癌剤治療をしましょう」といわれました。まあ、普通、抗癌剤もきくかきかないかは分からないと思っていましたし、今どきネットや本で調べたらいくらでも病気についての詳しい情報もでてきますよね。で、2年以内の生存率0%と書いてあるでしょう。ともかく厄介で難解で治りにくいとかね。ああ、そうか。もう、俺も終わったなと思ったのを覚えています。だから意外とね、あきらめが早い方なんですよ。今さらじたばたしてもしょうがないという、不思議な気持ちになりました。もうなるようにしかならないなあと思って。我ながら、切り替えが早いですよね。

楽しかった入院生活、そして今

入院したのは生まれて初めてでしたが、とにかく病院の生活を愉しんでいましたね。今まで体も丈夫な方だったから、人に世話をしてもらうことがなかったでしょう。「内田さーん、体温を計りにきました」とか、「薬、飲みましたか?」とか先生や看護師さんに優しく声をかけてもらえるのがすごく嬉しかった。それに仕事もしなくてもいいわけです、毎日が日曜日(笑)。幸い、寝たきりで、痛くて苦しいという状況じゃなかったので、そんなことも言えたのでしょうけど。

 でも今思えば、当時、家族や友達や仲間が支えてくれたことが大きいですよね。ある友人が、「内田さん、大丈夫よ、絶対に死なないから」と言ってくれたり。だから、僕はもう死ぬつもりだったんだけど、「死なないから」と言われたことで、本当にその通りになった。別の友人からは、あるお医者様が書いた「末期癌の人たちへ」という本をいただきました。巻末にその先生自らが患者に対して喋ってくれるCDがついていまして、入院中にスマホにいれてもらって聞いていましたら、その先生がまた良いことを話されるんです。「大体、皆さんは病院に行って病人になって帰ってこられるんですよと。ひょっとしたら大学ノートに体温やどんな薬を何錠飲んだとか、頭痛がしたとか体が重たいとか日記につけていませんかって。そんなことやめてください、何の得にもなりませんよ」と、そういう先生なんです。「そんなこと気にする必要ないんです。医者はあなたを生かすために診ているのだから、ただ信頼すればいいんです」と。その話の中身はもちろんですが、その先生の声とそこから発せられるあたたかい空気に癒されましたし、大丈夫なんだと思うことができました。僕の場合、音楽の仕事をしているので、声や音の方がすーっと入ってきたのかもしれませんね。

 抗癌剤治療をして、1年後のことです。病院で検査をしたら、不思議なことにこれまで5センチあった癌の影がなくなっていたんです。治療以外にも食生活の改善などやっていましたので、一体何が効を奏したのかはわかりませんが、病院の先生のおかげです、ありがとうございますと頭を下げましたら、先生も「絵に描いたような奇跡ですよ、内田さん!」と自分のことのように喜んでくださいました。あれから早いもので3年が経とうとしています。今も再発の可能性がよぎらないこともない。でも病気をしてから、ピアノを弾ける喜びを前よりもずっと感じることができますし、こうして生かされていることにありがとうという言葉しか出てきません。これからもやれる限り、ピアノを弾いて音楽にたずさわって生きていきたいですね。

内田浩誠さん

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プロフィール
1953年生まれのジャズピアニスト。バークリー音楽大学(BOSTON)にて作・編曲科に学ぶ。卒業後、ヘレンメリルのJapan Tourのピアニストとしてプロデビュー。その後、東京を拠点にPiano Trioを中心に日野皓正(tp)伊藤君子(vo)・TOKU(tp)・阿川泰子(vo)・峰純子(vo)・鈴木良雄(ba)など数多くのミュージシャン達と共演する。また作・編曲などでTVコマーシャルや各種イベント等の音楽も手がける。円熟味あふれるサウンドとそのテクニックには内外からも絶賛されている。
これまでにリリースされたアルバムは、Piano Trio、ヘレンメリルとの共演アルバム、Piano Solo、コンサートのライブアルバムなど多数。近年は、崇福寺(福岡)ジャズコンサート、Jazz at Acros、住吉神社能楽殿ジャズコンサート、与世山澄子コンサート、2008年のヘレンメリルSAYONARAコンサートなど精力的に活動している。
01
アルバム
内田浩誠の初アルバム。ボストンのバークリー音楽大学時代に結成されたトリオ。リリカルなその音色から、ときおり影を落とすような陰影のある演奏がとてもいい。当時の日本人ピアニストにはない、とてもアメリカンなサウンド。
02
ヘレンメリルとの共演アルバム。個性あふれるヘレンの歌声に内田浩誠トリオが見事に応え、完成度の高い作品に仕上がっている。
03
内田浩誠初のソロアルバム。とても趣味のいい選曲で全てスタンダードナンバーによる作品。

内田さんのオフタイムは?

趣味は、バイク、登山。東京にいた頃は、仲間と北アルプスや南アルプスなどでキャンプをするのが大好きでした。九州では、くじゅう登山がお気に入り。バイクはしばらく乗っていませんが、できるなら阿蘇をめいっぱい走りたいですね。

[ 内田浩誠氏 連絡先 ]
Office Bighand
Add/福岡市中央区大名1-2-20・312
TEL/090-3600-9378
メール/savoy12
※ライブ演奏のかたわら、ボーカルレッスン
などの教室も運営。

<内田浩誠さんのライブが楽しめる老舗ジャズ喫茶>

店7915
店7922
JAZZ INN New COMBO ( ニューコンボ )
Add/福岡市中央区渡辺通5丁目1-22 
Tel/092-712-7809 Closed/不定
Open/ライブ は20:00~22:30くらいまで。バータイムは、ライブ終了後2:00まで。
日曜日は1:00まで。
※ライブは、2ステージ入れ替えなし、約2時間。
 予約は電話、メール(combo@f2.dion.ne.jp)にて受付中。


●9月2日(水) 20:00〜 前売り3,000円、当日3,500円
 内田浩誠グループ [内田浩誠(pf)/田部俊彦(ts)/AX小野(ba)/上村計一郎(drs)]
●10月6日(火) 20:00〜 前売り3,000円、当日3,500円
 内田浩誠グループ [内田浩誠(p)/他]

<内田浩誠さんのライブが楽しめる老舗ジャズ喫茶>

店_7919
River Side (リバーサイド)
Add/福岡市中洲3-7-34 
Tel/092-281-6843  Closed/日曜日
Open/月〜木 19:00〜25:00(金曜日、土曜日〜26:00)
Price/チャージ 800円(アルコール)、
500円(ソフトドリンク)/人 
ライブチャージは、演目によって異なる。
Mail/info@jazz-riverside.com

●9月10日 (木)20:00〜 チャージ2,500円
 内田浩誠(p)/with 西田麻美(vo)/森しのぶ(b)
●9月17日 (木)20:00〜 チャージ2,500円
 「浩誠とMAYUMIの部屋」内田浩誠(p)/MAYUMI(vo)

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