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OffTime 8月号 編集後記

編集長/黒木 正和

 中央区警固本通り〝筑紫女学園〟を過ぎ、桜坂方面右手の裏小路、家路を急いでいた深夜2時頃、旧黒田藩家臣の屋敷跡の土塀にボオオッと青白い炎が浮かんでいるのが見えた。酔眼を擦りながら近づいて行くと、強烈な冷気に包まれ、身体ごと吸い込まれそうになり、異様な眼力と真紅の唇の日本髪の女が、着物の袖から伸びた白い華奢な手で、オイデオイデをしている。冴え冴えと凄まじく妖艶な女の姿に、瞬時で酔いが醒め、後退するが、その引力は強力でグイグイと引き寄せられる。女の周りの気配は、水面に濃い藍を垂らし撹拌し今にも氷結しそうに渦を巻いている。ふとこのまま吸い込まれても構わないと一瞬甘美な気持ちが生まれたが、両眼を閉じ頭を振り、声にならない声を絞り上げて踵を返した。寸でのところで何とか無事だった。それ以来その小路を通らないが、時にあの女にいま一度という誘惑に負けそうになる。矢張り、足は無かった。10年前の実体験である。

●Off Time発行元

ドリームシェア株式会社
株式会社コマーシャルアーツ

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