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福岡の医師・医療スタッフの休日を応援するRefresh Magazine。Doctor's Interviewを中心に、グルメ・旅・ライフスタイル・コラムをお届け。

セントマザー産婦人科医院 院長 田中 温

不断の臨床と研究を重ね、安心安全の不妊治療で患者さまに心からの笑顔を——。激動の昭和団塊の時代を経て、さらにプロフェッショナルの高みへ。

北九州折尾出身で新潟大学医学部出身の産婦人科である父の次男として新潟市で生まれた田中温少年は、戸畑の明治学園小学校、京都の中高一貫校洛星の寮生活を経て東京の順天堂大学医学部へ。激動の昭和の中、順天堂大学病理学教室斎藤修教授の指導を受け、中潟直己先生、戸枝通保先生と運命的な出会いで不妊治療の道を踏み出し、柳町隆造博士を恩師として現在に至る。

愛妻と8名のドクター及びスタッフとさらなる研究研鑚を進めると、田中温院長は穏やかだが芯の強い声で語った。

セントマザー産婦人科医院 院長 田中温先生
世界を視野にさらなる研鑚をと語る田中院長

On — 仕事のこと

父君は新潟大学医学部へ 田中温院長は新潟で生まれ、3歳で折尾に

生まれたのは新潟市ですが、経緯がありまして、当時田圃ばかりの赤間出身の父・田中壮介が医者になりたいと新潟大学医学部に入り、私の朧気な記憶では医局に属さず、オギノ式で有名な荻野久作先生に弟子入り。新潟出身の母と結婚して長兄・憲一(新潟大学産婦人科元教授)が生まれ、私が3歳の時に家族そろって折尾に戻りました。

小学校は戸畑の明治学園小学校

小学校は戸畑にある明治学園小学校。普通に粛々と登下校を繰り返した6年間でした。

京都洛星で中高一貫の寮生活 土日曜休日は神父と夕食を共に

京都の中高一貫校の洛星に進学しました。当時北九州から関門海峡越えて京都へという輩は珍しく、ましてやフランスのビアトール会が運営するカトリック系のミッションスクール。仏系カナダ人神父が校長だったり教師だったり、ネイティブの英語やキリスト教文化に接することができました。

私は寮生活で、寮生20名中殆どの学生は関西圏から来ており、日曜日は実家に帰りますが、ひとり私は残り、舎監や神父と夕食を共にするなど可愛がってもらいましたね。

父君兄君の影響で順天堂大学医学部入学 ラグビー三昧の中ダンパバンド活動も

元来文科系で、その受験に失敗し、北九州の実家に戻った時に、改めて父も医者だし、兄も新潟大学の医学生であることに気付き、医師になることもありかと(笑)。

順天堂大学に入学し、中野で下宿生活。6年間一生懸命やったのは、ラグビーでした。医学部のラグビーで”東医大”で優勝、”関東医歯薬リーグ”3部制の中、1部で優勝するなど頑張りました。

ラグビー以外では”R&B”が好きで、ダンパ(ダンスパーティ)のための演奏バンドでギターとヴォーカルを担当。フォートップス、テンプテーションも好きで、CCRの”雨を見たかい”をコピーしたりしてましたね。

下宿に風呂がなく、午後11時に閉まる銭湯に間に合うように帰るのが常でした。中野駅から徒歩10分、ライブの殿堂”中野サンプラザ”ができるのは、私が下宿を去った直後でした。

東医体決勝戦(対慈恵医大)
東医体決勝戦(対慈恵医大)。パスを渡そうと後ろを向いているのが私です
学祭での演奏(日仏会館)
学祭での演奏(日仏会館)。左から2番目のベースギターを弾いているのが私

順天堂大学医学部産婦人科教室入局

入局は順天堂大学医学部産婦人科教室で、古谷博教授。父と兄が産婦人科医だったこともあったと思いますが、発生学への強い関心が大きかったかな。人間も含めて生命の起源と発生に関するエンブリオロジーに興味を持ちました。

入局後2年で順天堂大学医学部産婦人科大学院に進み、この頃、病理学、細胞診の指導医を得て、約50体位の解剖を行いました。

中潟直己氏との運命的出会いで不妊症治療の道に踏み出す

中潟直己氏は北里大学畜産学部出身のエンブリオロジストで、最初は病理学のスタッフとして出会いました。その後彼はマウスの世界中の精子を凍結したバンクを日本で初めて開設し、その業績を評価され熊本大学の農学部の教授。その彼から体外受精のイロハを教えてもらいました。

英国のエドワード生理学者とステプトウ産婦人科医のチームが世界で初めて人間の体外受精に成功して世界が大騒ぎしていましたが、私たちはマウスの人間版ができたなという認識で左程驚くこともありませんでした。

越谷市立病院産婦人科に医長として着任(生涯の友、戸枝通保先生と同期就職)

昭和58年7月に越谷市立病院産婦人科・臨床検査科兼医長として着任しました。当時、臨床検査科には20名ほどのスタッフがいて、不妊治療の原点となる排卵メカニズム解明を手伝ってくれたおかげで私は超音波診断やホルモン検査に没頭し、体外受精の長い研究研鑽が始まりましたね。この時一緒に不妊治療を開始した戸枝通保先生(宮崎医大卒)と出会い、今でも交流があります。

世界で初めて日本初卵管内移植(ギフト)法成功 尿中ホルモンで排卵日が判明

“排卵日”を超音波と尿中ホルモンで判明し、ギフト法の開発に至りました。

当時、すでに体外受精が始まっていましたが、妊娠率が1〜2%の状況で、そこで自然と受精するのは卵管の中だから卵管の中に、精子と卵子を注入したらどうかと、中潟さんに相談し、実行したのが米国に次いで世界で2番目の成功。

GIFT法の採卵前の写真
GIFT法の採卵前の写真。下段向かって右端が中潟直己先生、左端が戸枝通保先生
GIFT法出産第一号、越谷市立病院にて
GIFT法出産第一号、越谷市立病院にて。1列目一番左が戸枝先生、その隣が私

体外受精の95%が凍結胚活用 さらにROSI法顕微授精の成功を世界に発信

その4〜5年後、体外受精による妊娠率が30%と上昇しギフト法にとって代わりました。さらに培養技術の進化、卵子精子の凍結、ガラス化法(Vitrification)の出現で、受精胚を良好な状態で凍結することができるようになりました。現在日本の体外受精で生まれる95%の新生児がこの凍結胚です。日本の凍結技術は世界でナンバーワンなのです。

さらに顕微授精を開発し、男性不妊が殆ど無くなり、無精子症も睾丸から精子を採取したり、世界で初めてパイプカットしていても精巣にたまった精子を採取することが可能になりました。

また、精子が全くない状態(非閉塞性無精子症)でも精子になる前の精子細胞からこどもができることを1993年、恩師でもあり世界的に有名な柳町隆造博士(ノーベル賞候補)がマウスで証明し、世界で初めて私が不妊治療に応用し成功しました(ROSI法)。現在は、その成功率を高めるため研究開発を行いROSI法を世界に広げていきたいと思っています。

柳町隆造博士と田中温院長
柳町隆造博士と(緊張しています)

平成2年4月 セントマザー産婦人科医院院長就任 世界を視野にさらなる研鑚を

世界を視野に産婦人科医として、いままでも臨床と研究に明け暮れて来て、これからも一層の研鑚を積む所存です。院長として、スタッフに言ってることは、”目の前にいる患者さんを自分にとって一番大切な人だと思いなさい”です。ベストな治療はひとつ。患者さんのために仕事をしなさいということ。

現在常勤5名、パート4名のドクターがいます。大学院生も受け入れて、全員が学位を取得できるように指導してきました。大変ですが、将来の産婦人科世界のためを思えば、精いっぱい惜しみない支援を続けたいですね。

蜂須賀徹先生との再会

蜂須賀徹先生(通称ハッチャン)は私のラグビー部の2年後輩で大学卒業後は九州大学産婦人科に入局、学会で時々会う程度でしたが、平成18年より産業医科大学産婦人科の教授に就任され、退官までの間大変お世話になりました。蜂須賀先生にはROSIの新しい研究開発を行う際の倫理委員長もお願いしました。

蜂須賀徹先生と田中温院長のツーショット
蜂須賀先生とのツーショットです。当院の施設内倫理委員会委員長をお務めいただきました

Off — オフのこと

キーボードとAI活用で曲づくり 唱歌から演歌、ロックまで

音楽は大好きです。現在は演奏はしていませんが、今はAIによる作曲を楽しんでいます(笑)。これまで遊び感覚で100曲程、作詞作曲しています。メロディーとリズムを大切に、唱歌から演歌、ロックまでキーボードで楽しんでいます。仕事の合間の至福なひと時ですね。

健康のためのジョギング

ラグビーを6年やっていた所為か、今でも走っていますが歩くより遅いスピードです(笑)。

奥様は料理の達人で仕事のパートナー 次女の娘さんは臨床心理士

病院の人事とマネージメントを妻がしている所為か、スタッフいわく”ホントの院長は奥様”(笑)。昭和薬科大学出身で、ずっと私の研究パートナーでもあります。しかも料理の達人です(笑)。

こどもは娘ふたり。長女は東京海洋大学で海洋学博士の資格を取り、ホノルルで鮪のトランスアビリティの仕事をやっているようです。次女は東京国際福祉大学の講師で臨床心理士。私の仕事での卵子提供者へのカウンセリングを担当してくれています。

略歴

  • 昭和51年3月 順天堂大学医学部卒業
  • 昭和51年4月 順天堂大学医学部産婦人科教室入局
  • 昭和53年4月 順天堂大学医学部産婦人科大学院入学
  • 昭和57年3月 順天堂大学医学部産婦人科大学院卒業
  • 昭和57年4月 順天堂大学医学部第一病理学教室入局
  • 昭和58年7月 越谷市立病院産婦人科・臨床検査科兼任医長
  • 平成2年4月 セントマザー産婦人科医院院長
  • 平成28年4月 順天堂大学医学部産婦人科学講座客員教授

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