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OffTime5月号 ちょっとシネマ

編集長/黒木 正和

WOWOWシネマで「バルトの楽園」を観た。第一次世界大戦中の徳島県鳴門市の板東俘虜収容所を舞台にした映画である。1917年から1920年までの約3年間、収容所所長松江豊寿中佐の約1,000名のドイツ兵捕虜への人道的対応や地元住民との交流を史実に基づいて創作された。
 敵ながら祖国のために戦ったドイツ兵達を勇士として遇した心情の柱には、幕末から明治にかけて時の政府から迫害を受けた会津藩士の子としての矜持があり、弱者に対する慈愛があった。それが地域の人々にも伝わり、ドイツ敗戦でウィルヘルム皇帝が退位した時には嘆き悲しむドイツ兵を婦人達は心から慰労している。
 捕虜の多くは志願兵の元民間人で、自らの職業を活かし、施設内には酪農場を含む農園、ウィスキー蒸留生成工場、パンを焼くための竈も作られ、ドイツ博覧会も催された。その時には阿波踊りで大いに盛り上がったという。
 ちなみに、今日でも日本で大晦日に演奏されるベートーベンの交響曲第9番が全曲演奏されたのは、終戦で自由の身となったドイツ兵達の感謝を込めた楽団によるものが初めてであった。

●Off Time発行元

ドリームシェア株式会社
株式会社コマーシャルアーツ

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