はるか縄文の頃から人々の生活に利用され、日本の伝統工芸としての地位を確立してきた「漆」。英語では、漆器を「JAPAN」とよぶのは有名な話です。その語源は、16世紀後半。日本を訪れたヨーロッパ人が漆塗りの品々を自国に持ち帰り、日本の特産品として紹介したことに起因するそうです。
さて漆といえば、朱色や黒色に塗られたお椀や箸、盆などの日用品をさす漆器として使われるほか、日光東照宮などの文化遺産を修復する接着剤の役割も果たす優れた素材としても知られています。そんな奥深い魅力を秘めた漆とは、一体どのように作られるのか、ひも解いてみましょう。
漆液とは、東アジア梅雨地域の全域に自生する漆樹の幹の内皮を傷つけて採取する樹液のこと。葉が開き出す6月下旬から10月中旬にかけて採取されます。一本の漆樹から採取できる量は、樹齢15年くらいの樹で約135g。長い年月をかけて成長した樹にしては、大変少量です。その樹液を加工して、天然樹脂塗料として木をはじめ色々なものに塗ったのが漆の器です。縄文時代の遺跡からは、漆で仕上げた櫛や腕輪なども出土しているようにその歴史は古く、各々の国によって独自の漆文化が育まれています。
漆は、乾燥して固まると、強い塗膜を作り、酸やアルカリなどの化学薬品に対しても耐性を持ち、しっとりしたあたたかみのある手触りが持続します。さらに劣化にも強く、防腐・抗菌効果を持ち合わせているため、器などに大変適しています。漆というと高価だからもったいなくて使えないという声も多く耳にしますが、そんな心配はいりません。漆は強く、使うほどに肌合いに光沢が出て、2代3代と楽しむことができるのです。お手入れも簡単。洗剤をつけたスポンジで洗い流したら、すぐに乾いた布巾で水気をとって乾燥させてから食器棚へ。食器乾燥機や電子レンジにかけるなど手荒なことはせず、ごく自然なお手入れを心がければ長持ちします。また木地からしっかり作られた品であれば傷や欠けも直すことができますので、購入先に相談してみましょう。
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